東京造形大学造形学部デザイン学科の専門科目である「建築デザイン」という授業での成果です。

「80平方メートルの住宅」という課題条件を与えて取組んだ住宅作品です。

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毎年夏に佐倉市立美術館で開催する建築展に今年は東京造形大学造形学部デザイン学科の学生達の住宅作品を展示しました。私は木更津で現在工事進行中の屋上緑化住宅を紹介しましたが、課題の条件に近いことと学生達の課題と同時進行ということもあったので、設計課題を進める段階でスケール感や具体的な施工に関する教材になりました。2年生となって初めて住宅の設計を4ヶ月近く粘り強く纏め上げる作業は、とても良い経験になったと思います。

デザイン学科二年 島田 温子

「女性二人が都会生活をする為の住居」というのがこの計画の主題である。1階はピロティの駐車スペースと玄関、収納で構成され、なぜか1階収納スペースから2階の中心部分である極小の二つの個室(セキュリティ万全な寝室)に繋がる。それをぐるりとパブリックスペースが取り巻いている計画である。女性の発想が随所に表れていることがおもしろい事と、かなり密集地を想定している事が容易に理解できる形態であり、平面計画の新鮮さと外部デザインの纏め方が評価できた。

 

デザイン学科二年 天野 竜一

海辺の週末住居として計画されている。敷地の条件は自由としたが、この計画は敢えて海を望む方角の間口を小さく取っている。それにより、エントランスから長い廊下を屈曲しながら海を望むリビングへと導くまで、期待を感じさせる効果を狙っているところがおもしろい。室内は明暗の効果を狙った光りの取入れ方や低く抑えた天井の工夫で、建物のプロポーションも伸びやかなかたちであったことが評価できる。

デザイン学科二年 春山 恵介

市街地の比較的密集地に計画された住居である。中心にキッチンがあり、囲むように居室が取巻き、中庭が各部屋の開放的な繋がりの場となっている計画である。2DK、3LDKという枠組みで括れたこれまでの生活スタイルが、時間の経過と共にはたして機能しているか疑問である昨今、このような住宅がそれ程異例ではないことを感じさせます。この計画はこの頃建築雑誌でたまに見かけるかたちである事が少し気になったが、自分なりのデザインアプローチを展開して、思考方法とかたちが設計段階において整理されていく様が明確で良い印象を与えた。

デザイン学科二年 児玉 佳祐

六角形を基準とした幾何学型の住宅です。鉄腕アトムに出てきたような、または、バックミンスターフラーのウィチタハウスのような形をしていて私の年代ではノスタルジーを感じさせる未来ハウスですが、今の学生にとってはこのような形態はとても新鮮なようです。円形や多角形を平面計画に使う場合、おおよそ計画に破綻をきたす場合が多いので、このような場合計画的な完成度を求めますが、それに応えて何とか纏めきったということが良かったと思います。

 

デザイン学科二年 島田 雅久

この住宅はガラスで内部空間をつくり回廊を挟み外壁で覆った形態をしている。本人は内部空間のガラスは水廻りや収納などの自由に移動可能と説明していたが、実際には実現不可能な部分も多く、住まいにこれほどの仕掛けが必要なのかというのが率直な感想でした。しかし、かたちに彼自身のオリジナリティを感じさせたのと、模型の表現が上手いことが評価できました。住宅というよりは商業デザインでの可能性がありそうな作品です。

 

 

デザイン学科二年 大橋 秀一

面格子壁の住宅案である。面格子を耐力壁とすることで筋交いや大壁に頼らず、透明性の高い壁面で構成したところが新しい取り組みであった。屋根を支える柱梁の主構造と二重構造となっていて、それが平面プランに回廊として表れている。近頃、面格子構造はいろいろなケースで試されているが面格子自体は伝統工法である。民家的なプロポーションで格子を痛めないよう軒を出したシンプルなデザインは好感がもてた。

 

デザイン学科二年 綱 優将

この住宅は都心部の実家を設計条件に計画した自邸です。廻りの環境や条件を聞きながら説明を受ける限りでは、かなり破綻した計画でした。しかし、設計者が自邸として計画する場合、固定観念が無意識に表現されるところからどれだけ距離を保てるか、デザインの決定に悩む思いがありますが、この作品はそんなことを思わせる隙もないくらい大胆な形態で、デザインしたいという欲求をダイレクトに感じさせてくれる作品でした。

 

デザイン学科三年 吉田 ひとみ

「延べ床面積80平方メートル」という条件を立方体に置き換え、空間分割によって平面を与えていった住宅計画である。住宅の計画で部屋をユニットとして考える案は今となってはかなりレトロであるが、学生にとっては新鮮さを感じるようです。しかし、この計画はユニット化というよりグリッドの立方体に内部空間を与えていく際に壁面のタイプも各種用意され、空間に効果的な表情を与える仕組みなどのおもしろさもあって、全体の軽やかさが評価できた。