屋上緑化住宅/M邸 設計期間2005.09〜2006.03 工事期間2006.04〜2006.09

設計日記:日本の平均的な住宅取得者は、年令層30代夫婦、子供1人〜2人、将来どちらかの親が同居の可能性ありという設定だ。住宅メーカーでも建売住宅でも平均的な住宅購入者の生活パターンに合わせているのは当然のことだが、問題は平均的に必要と思われる条件のみで主要な計画パターンが決定されていることに私たちが無頓着でいてしまうことだ。2階には陽当たり最高な個室の子供部屋、1階の少し暗めではあるがリビングとそこに併設された和室、ただ衛生的な北側の浴室やトイレ。目一杯の収納。一見これらは必要条件のようだがこの計画パターンから20年後30年後はどのような生活が想像できるだろうか。たとえば、子供が巣立ち、夫婦二人の生活となった場合、2階の子供部屋は倉庫と化し、その荷重で地震に不安を感じながら、南側に立ちはだかった隣家と共に1階で生活することにはならないだろうか。明るい新建材とハイテク機器でごまかされていた水廻りは健康な環境が確保されているだろうか。そして、確実なのは、目一杯あった収納スペースは二度と日の目を見ない物で目一杯になっているだろう。どうも私たちは新型車を買うがごとく、所得時から5年先くらいまでの生活を切取ったようなピンナップ的住居を求めているような気がしてならない。 この住宅は若い夫婦と今はまだ幼い息子さんの住宅として計画が始まった。この計画地は木更津でも希少な富士山の見える高台である。主人は多分、富士山が年一回正月のとても空気が澄んでいる時に限られるかもしれないが「見える場」であることに魅力を感じここを生活の場として選んだ。富士山は信仰の対象でもあり東西南北以上の方角性もあり、富士を見るという感覚は日本人にとって特別な感情がある。 富士山を見たい。庭でちょっと野菜や草花を育てて台所からちょっと取りに行ける。出窓は勉強するところ。雨が降ったらすぐに洗濯物を取込める場所がある。買い物から車で帰ってきても慌てず荷物を下ろせる。ちょっとした自転車の置き場がある。かっこう悪いスチール物置を置きたくない。面倒を見てあげなければならないが、屋根を緑化してしまおう。ここからは確実に富士が見えるし、ひなたぼっこもできる。断熱性も良くなるか・・・。 ずっと続きそうな何気ない日常生活を設計与件として組み立てていくと、敷地形状やお隣の都合にあわせて凹んだり凸でたり斜になったりしてかたちが決まってく。そして最後まで子供部屋の場は不確定のまま基本設計が完了した。

■所在地/木更津市

■家族構成/夫婦+子

■構造/木造

■敷地面積/202.15M2(61.15坪)

■建築面積/ 80.10M2(24.23坪)

■延床面積/103.71M2(31.37坪)

 

リビング出窓書斎コーナー:この上の屋根に緑化しています。断熱効果はどれほどでしょうか。

キッチンよりリビングを見る:座の生活のため天井も低めですが勾配天井として圧迫感をなくし、キッチンの床レベルを30センチ下げてキッチンとリビングの視線を同じにしている。

大きなテラス窓はウッドテラスへ繋がり庭と一体感を感じる。この方角に富士山が見える。

和室

洗面

階段室:リビングと緑化された屋根が見える

二階寝室:一階の部屋に居るかのように芝生の庭が広がっている。

二階寝室

カーポートエントランス

アプローチ:アプローチには納戸(左木製扉)が併設、雨の日でも快適。

 

ウッドテラスの庭:スロープを付けて手前に猫の額ほどの畑を作ります。道路との境界は、協定で塀は設けません。ベンチの高さで囲いを作りました。ここにプラントボックスを置けば目隠しにもなるし、靴を干すのに便利そう。

 

緑化屋根:緩勾配なので、さながら平家の家の庭のよう。

南全景